065.くだもの
寝る前に、グレープフルーツを食べました。
男のくせにそんなによく果物を食えるな、と貴方は言いました。
指を舐めながら、のどが渇いたので、と答えると貴方は鼻で笑って杯を一気にあおるのです。
そしてその酒精くさい口で、くちづけを。
酒臭いです、と嫌な顔をすると口の端を吊り上げ、
男なら鶏を食え、酒を飲め!それでいい!
そう笑われました。
嗚呼、
もちろんそんなはずはないのに。
豪快。
貴方はそれでいい。
大きな手で酒を勧めてくるのをそっと押し返す。
酒は貴方の唇から飲むので要りはしないのです。
そのセリフを貴方は大層気に入られて、
何度も何度も口付けてくださいました。
粗野で豪快。
女々しいことがお嫌いで、本能のままに荒々しく駆け抜けて行く人。
でもわたしは知っているのです、
貴方の紹興酒には粗目が入っていることを。
果実の甘い汁に濡れた私の唇を、指先を、
貴方が好んで舐めることを。
豪快な男の中に可愛さを見つける文遠。
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