062.指輪 <4>





 波の音のみが四十万のように辺りを覆う夜のコンテナ置き場を、一台の車が通り抜けていく。
何かを忍ぶように夜の闇の中を行くその様子は、敷地に入ってから何ヶ所かで監視を受けていた。

特にスピードも出さず安定した運転で進む黒のベンツはやがてある倉庫の前で停止する。
番号を確かめているのかしばらくそのままアイドリングしていたが数分と経たずにエンジンを止めた。
ドアが開き、男が一人降りた後、重いドアが閉まる音はやたらと周囲に響いた。

男はコツコツと硬い靴底の音を響かせながら2メートルほどシャッターが開けられたままになっている倉庫へと躊躇いもなく近付いていく。
倉庫の中は中央にスペースを作るように雑多な箱や機械が脇に寄せられている。
天井は高くなっているがシャッターの向こう側から壁伝いにL字型に二階が作られていて、そちらが事務室のようになっているのが伺えた。
小さな明かりがついていて、誰かがいるのもわかる。
男はほぼ中央まで来るとよく通るドスの利いた声を張った。

「出て来い蝶野!来てやったぞ!」

ややあって事務室のドアが開き、態度の悪いのばかり数人がぞろぞろと姿を現す。
暗くて顔はほとんど見えないが、明らかにリーダー格の男が煙草片手に口を開いた。

「よぉ、よくわかったな俺の名前なんかよ。」

「鉄砲玉送って来たのが政徳会でその若頭と部下が最近破門になったって聞けばすぐにわかる。」

見上げる男の態度は電話を介していた時よりも更にふてぶてしい。

「…フン。」

首謀者であり先日まで政徳会若頭だった蝶野は、つまらなそうにタバコを吸い込んだ。
蜀の分家は全て家名に「徳」が入っているが、無論その全てが徳の厚い者ではない。
顔のはっきり見えない薄闇の中でちらちらと小さな赤い火が動いている。
蝶野は前回張遼の命を狙った件で、行動隊を指揮していたため組に切り捨てられた。指示したのは政徳の組長だったが本家からケジメを言い渡され組長が選んだ。

「で、破門受けたお前と違って俺らは忙しいんでな、とっとと話とやらを済ませて人質を返してもらおうか。」

蝶野付近の元・玄人だったチンピラ達が俄かに身動きし、蝶野もこめかみをひくつかせた。

「…おお、そうしてやりてぇとこだけどよ、俺ぁ二人で来いっつったよな?
 …てめぇの大事な組長はどうしやがった、ええ夏候惇!」




このちょうど一時間前、夏候惇は張遼の鳩尾に握り締めた拳をめり込ませていた。
誰かに電話をかけようと手にしていた携帯が手から滑り落ち、地面に着く前に夏候惇に受け止められる。

「…若頭!?」

気付いた部下が困惑の声を上げる。

「…騒ぐな。」

低い声で答え、夏候惇は張遼の体を抱え直す。
張遼は何が起こったか理解する前にキレイに意識を失っていた。
ぐったりと夏候惇の腕の中に体を預けている。

「さすがに二人で行く訳にはいかねぇだろうがよ。
 …おら、奥の部屋に寝かせるからドア開けろ。」

そのまま張遼の体を抱え上げると若い衆が慌てて返事して前を走っていく。
事務所には一応張遼用の寝室がある。
運びます、という手を否定して夏候惇がベッドまで運びゆっくりと下ろしても張遼は気を戻さなかった。
うろたえたままの部下達を大丈夫だと押しやりドアを後ろ手に閉めながら指示を出す。

「…気が付かれる前にさっさと出るぞ。
 首謀者の名前アがってんだろうな?」

政徳の蝶野です、との声を受け鼻を鳴らす。

「ゲスが下らねぇことしてくれやがって。
 …オイ、今すぐ動ける奴何人いる?半分だけ俺の10分後に出てこい。そんで合図があるまで外周で待機だ。残りは張遼の指示で動け。
 起きる前にカタつけてぇがな。」

横の男にアレ持って来い、と指示して夏候惇は車へと歩き出す。後には部下が忠実に従っていた。
誰もが異を唱えぬまま。





 「…生憎ウチの組長はお前らなんぞ相手にしてやる暇はねぇんでな。
 俺様一人で十分だろ。
 オラ、痛い目みたくなかったらさっさと沢渡と高木出しな。」

続いて下品な笑いが起こった。予想内のことなので半眼でやり過ごす。
蝶野は連れてこい、と小声で指示を出すと煙草を落とし踏みにじる。

「痛い目みんのはてめぇだろうがよ。
 こんだけ数に囲まれて一人で勝てるってのは、ちょっとおめでたいんじゃねぇのか?見たとこ無手のご様子で。」

言葉を合図に物陰からゾロゾロと男達が出て来る。それぞれ手にドスやらチェーンやらを手にしている。もしかしたら日本刀も混ざっているかもしれない。

「…初っ端から話する気はまるで無ぇのか。」

「いやいや。これは脅しだ。大人しくしていてくれりゃ手荒にしねぇよ。」

事務室内から蝶野の横へ縛られたままの人質二人が引き立てられてきた。
猿轡を噛まされているようだが、とりあえず無事なようだ。

「…ほぉ。…で?」

夏候惇が顎で促すと、蝶野は二本目の煙草に火を付けた。

「大体の想像はついてんだろ?新開発プロジェクトだ。蜀は手を引いてもらいてぇんだ。」

「お前らもう蜀じゃねぇだろ。」

「手ぇ引かせたって功績がありゃ帰り咲けんだろうが!!」

蝶野の横の男が吠える。

「…てなわけでな、曹操さんのお気に入りの組のツートップ手札に揃えて交渉すりゃ少しは話できるんじゃねぇかと踏んでな。
 だが組に切られた俺達の戦力じゃ、情けねぇが隙をついて運転手やら女やら攫うのが限界だ。
 それでも悪くねぇ、こいつらダシにお前ら釣れりゃ結果オーライだ。
 お前と運転手の交換はすぐにでもしてやるよ。
 …だからとっとと組長呼び出しな!」

心持ち夏候惇がむっとする。

「俺と運転手が釣り合うってのか。」

「そうは言わねぇが、ツートップ揃ってねぇと分家存亡の危機になんねぇだろ。大人しく捕まれや。」

いよいよ夏候惇が喝と吼えた。

「侮るな!この夏候惇、戦わねぇで雑魚に膝を折れるか!」

びくり、と一瞬男達が怯む。
蝶野は舌打ちと共に嫌悪感と煙草を吐き捨て、囲め、と合図する。

「…じゃあ大人しくしてから捕まえてやるよ。」

宣告に夏候惇が応える。

「張遼を引きずり出したくばこの俺を殺して死体に頼むんだな。」

月光を背に、腕を組んだ夏候惇の長髪が舞う。
きらりと首の後ろが光った。

「何だ…?」

周囲の誰かの声を聞いて、逆光の中で夏候惇がニヤリと笑ったのがわかった。

「阿呆どもめ。一人で戦争やるのに本当に丸腰で来ると思ったのか?」

何を、と凄みながら男達がじりじりと周囲を取り巻いていく。
背に手を回すと、それは一層きらりと月の光を反射した。

すらっ、と鞘走ったのは鈍く光る日本刀。
取り巻きがそうと理解した時には既に一人斬り捨てられていた。

「う!?が、ぎゃああああ!!」

「なっ!?て、手前ェ!!」

斜めに胸板を切り上げられて血飛沫と悲鳴が吹き上がった。
今更血にビビる者はこの場にいないが、一瞬全員の動きが静止した。
正確な太刀筋と目にも止まらぬ居合いの速度。
機先は、完璧に夏候惇に制された。

「…テメェ人質どうなってもいいのか、ああ?」

蝶野が声を低めて唸る。
夏候惇はトン、と血に濡れた刀の峰を肩に乗せ嗤う。
組から持ち出したその手の刀は、柄は極道イメージの白木ではなく一般的な編み縄である。白木だと手から滑り実践に向かないからだ。今まで幾度も修羅場を経験している。
古代の巨匠作の年代物ではなくごく近年造られたが伝説物に劣らぬ名刀で、名はハルキ、という。

「おお、やってみやがれ。人質は無事だから価値があんだ。枷が無くなったら心置きなく応援呼べらぁ。それとも何か、チャカも持ってねぇ棒切れ一本持っただけの男一人、力ずくでどうにもできねぇってのか?」

「んな訳あるか調子こいてんじゃねぇぞボケがァ!」

挑発に乗りチンピラどもが語気を荒くする。
上等だ、と夏候惇は笑んだ。

「手加減する気は無いんでな。死にたい奴だけかかって来い。」

夏候惇はすっ、と一人体勢を整える。
空気がぴりりと引き攣れた気がした。
片方だけの眼が凶星のように禍々しく煌く。
社会からあぶれて道を踏み外したのではなく、真の裏社会の血に生まれたものの本物の鬼迫。
空気すら裂くような眼光を受けて倉庫内の蛮人は残らず息を飲んだ。

夏候惇は片手で剣を構え、口の端すら歪めず言い放つ。

「組が若頭、隻眼の夏候惇、全力で手前ぇらをぶっ潰させてもらう。」








 その頃、首都高を猛スピードで駆け抜ける一台の車があった。
時間ゆえに他に車両が少ないのが幸いか、荒い運転で突っ走る純白のフェラーリは、それでも事故など起こさない。
張遼の愛車だ。
はっきり言ってブチ切れていた。

20分ほどで気を戻した張遼は経過を説明されて、目の前の部下を思い切り一発殴って事務所を飛び出した。
誰が頭だかわかってんのか、全員待機だ、頭冷やしとけ馬鹿野郎!、と怒鳴りつけて。
部下達は出撃準備をしていたものの、そう指示されて追うに追えなかった。そもそもの車の性能面でも無理があるのだが。
猛烈なスピード違反に、無論白バイが追いかけて来る。
バックミラーにその姿を確認してチッと舌を打つ。パトカーがいないのはパトカーが追いついて来られない速度で走っているためだ。

『そこの白のフェラーリ、スピード違反です止まりなさい。』

スピーカー越しの制止を無視して片手で携帯を取り出しアドレス帳から電話をかける。
数コールの後出た相手に
「私だ。首都高の白い車両を追わないように言え。」
とだけ言い、返事一言のみ聞いて電話を切る。
それから二分と経たずに白バイは減速し後方に消えていったが、張遼は確認すらしない。

「馬鹿め…」

苦々しい言葉が口から漏れるのを止められない。

彼の行動は確かに、組をいや張遼を守るための行為だったのだろう。
しかし張遼は何一つとして嬉しく無かった。

何故自分も隣で戦わせてくれないのか。
張遼をわかったつもりで結局勝手に守るのか。
…勝手に守って、死ぬのか。

夏候惇は策らしい策など持たずに言葉通り単身乗り込んで行ったという。

私はまた逃されて大切な人を失うのですか、呂布どの―…!






 「西に、ですか?」

あの日、張遼はめずらしく命令を聞き返した。
曹魏との抗争がいよいよ激化する中、呂布の護衛も務める一番戦力の張遼が本家を空けるのにはあまりに抵抗があった。

「ですが…」
「陳宮が決めたのだ、俺は知らん。」

反論は一番的確な形で遮られた。この場にいないブレーンが決めたことなれば仕方がない。

「袁の親父がお前のことを気に入っていただろう。縁を深めておくにはお前が適任だ。今この時期より後はいよいよ組から離すわけにはいかなくなりそうだからな。」
「…はい…」

いつになく真面目に言われて、神妙に張遼は頷く。
この時の張遼にとって呂布は揺るぎない絶対の存在であった。
鬼神のごとき覇気と強さで組の頂点に君臨する、まさに力の権化。
多少気性が荒く、治めるには向かない面はあったが、それは周囲でサポートすればいい。
彼に従っていられれば、抗争のただ中であろうと張遼は幸せだった。
増して、崇拝とすら言えるほど尊敬するその男に、愛されているという事実があるのだから。
呂布は張遼の腰を引き寄せる。

「…二日も相手をしてやって、早く帰ってこい。
 …必ず帰ってこい。俺のところに。」

張遼は初めて聞いた素直に甘える呂布の言葉にすっかりときめいて、はい、必ず、と熱っぽく答えた。
そのまま口を合わせた後、呂布は回していた手をほどく。
見上げた張遼に「行ってこい」と笑んだ。
さして不思議とも思わず張遼も笑みを返す。

「行って参ります。」

それは張遼が人生で最後に見せた無邪気な笑顔だった。


屋敷を出て行く張遼を二階から眺める呂布に後ろから声がかかる。

「帰る場所があるつもりで帰ってきますよ、アレは。」

呂布は言葉を返さない。

「…本当に行かせたんですね。随分と嘘が上手におなりで。」

陳宮が西行きを決めたなどというのは呂布の嘘だ。
先日、陳宮には懐かしい筆跡で手紙が届いた。差出人の名前は無い。
過去の友人と同じ筆跡で、今朝も。
『明晩、総攻撃。』

今の呂布には曹魏による総攻撃を防ぐ策も阻む戦力も無い。
間違い無く、明日の晩この組は消える。

「…張遼は地獄まで連れて行くおつもりかと思っていたんですが。」

幹部で張遼だけが、それを知らない。知らせるなと命じた主がいた。
視線で張遼を追ったまま、呂布が口を開く。

「…あいつは、生きていればいいと思ったんだ。」

それ以上言葉は続かない。
自分自身の中で特異な感情が生まれ混乱しているとの自覚はあった。
その戸惑いを呂布は自分では有り得ないと思うほど冷静に受け入れていた。
もう見えなくなった小さな背中。
恐ろしいほど無邪気で真っ直ぐなあの目が変えていったのだ。
野獣と、鬼と極道の誰もが恐れる呂布に微塵の恐れも抱かず付いて回ったのはアレ一人だ。
あの強い者だけを愛する妥協なき男。

愛していた。

呂布は身を翻した。

「…曹操!大人しく殺されるつもりは毛頭無い!一人でも多く殺し足掻いて奴の帰りを待ち受ける!
 高順を呼べ!戦闘準備を整えろ!」
「はっ!」

呂布の咆哮は全てが本心だ。
屈せず、媚びず、退かぬ。
呼びかけで若い衆が走り出す。幹部が指示を仰ぐ。
終わりに向けて全力で突進する。


そして二日後、張遼は変わり果てた家の前で呆然と膝をついた。






嫌な思い出が脳裏に蘇って来る。
二度と失うものかと決めたのに。

 …それを極道男はどいつもこいつも自己満で…!
 とりあえず顔を見たら一発ぶん殴る!渾身の力を込めてぶん殴る!

張遼は心に決めて再び携帯を手に取った。









 倉庫内には既に1ダースほどの男達が血まみれで転がっていた。
どれもああだのううだの呻いて立ち上がる気配は無い。

この道に入った時から幹部の席に座っていたとは思えないほど、夏候惇は実戦慣れしていた。
一対一の勝負でどうなのかはわからないが、少なくとも一対多の戦いでは非常に有能だった。
集めてきたのは腕に覚えのあるものたち、ボクサー崩れや力士崩れなどの元格闘家も少なくないこの業界で特に腕っ節で生き抜いてきた者たちだ。
それらを相手に夏候惇はたった一人で立ち回った。それも圧倒的な強さで。
取り囲まれても後ろに目があるかのように攻撃を避け、逆にそのまま勢いを利用してカウンターを食らわせる。
捕まえたと思えば急所に蹴りが入る。拳が飛んでくる。
間合いの外に逃げたと思えば日本刀の切っ先が迫る。

一対多でこれほどの損害を受けるとは、蝶野の予想をはるかに上回っていたが、ようやくそろそろ決着がつきそうだ。
蝶野は我知らず小声で漏らした。

「…危なかったな…。」

臥した男の背に日本刀を付き立て、片膝をついて夏候惇は肩で息をしている。
致命傷は無いものの、あちこち切り裂かれ打たれ、目に見えて消耗していた。
蝶野の兵数は監視も呼び戻して、まだ無傷が倒した数以上。無理して集めてきておいてよかったと内心安堵した。
多少手順は狂ったが、若頭を手に入れれば組長も出てこよう。
口元に知らずのうちに笑みが浮かぶ。

「そろそろだろ!強ぇえ若頭サンにキツイの一発入れてやりな!」

「「押忍!!」」

二階から蝶野が指示を飛ばす。
夏候惇はふらりと立ち上がったがもうスタミナが尽きる。そこらの不良のケンカとは質が違う。

 …破門になったくせに手下多すぎだろ…

心の中で毒付く。
10人やそこらなら、銃さえ持ち出されなければ一人でもなんとかなるかと思っていたが、予想以上に駒の数が多かった。
一緒に破門になった部下以外にも人員を集めてきているのだろう。もしかしたら破門は表向きのことで、今も組の命で行動隊として構成員を動かしているのかもしれない。
 だとしたら組ごとブッ潰すチャンスなんだが…
そうは思うものの無論今この状態で確認すべくも無く、また役に立つはずも無い。

胸ポケットには携帯が入っていて、リダイヤルボタン一つで敷地の外で待機している部下達が突っ込んでくることになっているが、押すイコール作戦失敗だ。
そうすれば自分は助かる可能性が高いが、おそらく接近を知られれば到着するまでに人質を連れて逃げられる。せっかく自分が痛い目をみてまで労働したのに、…というのはまだ良いが、拳まで入れておいてのこのこ失敗しましたなんてあの組長に言ったら、確実にドラム缶アンドコンクリート行きだ。それはもうペロッと東京湾に捨てられるだろう。
もしかしたら生きたままドラム缶インで、コンクリは首までしか浸してくれないかも。海水でブクブク死ねって。
…どうしよう。アイツならやる。きっとやる。

疲弊した中での一瞬の躊躇は集中力を著しく低下させた。
普段の夏候惇なら人間が背後に近付くことに気が付かないはずがない。

すぐ背後でジャリッという足音がして振り返れば眼前に木刀が迫っていた。喰らえば昏倒するだろう予想に硬くない威力。

「眠っちまいなぁぁああ!!」

避ける時間も刀で防御する暇もない。
くそ、ここまでか、と諦めがよぎった。

しかし自分のものではない絶叫を夏候惇は聞いた。

 パンッ

 ガランッ

 「あああああ!!」


覚えのある軽い狙撃音が鼓膜を打ち、見上げればまさに夏候惇に向かって振り下ろされていた木刀が吹き飛んでいた。

否、木刀が吹き飛んだのではなく、握っていた手を撃ち抜かれ転がり落ちたのだ。
続けて入り口を振り返るより早く射撃があり、手を撃ち抜かれた男を始め周囲の男達の肩や脚が薄闇の中だというのに正確に撃ち抜かれた。
安い粗悪な銃声が響いて、息つく間も無く周囲の5人全てがその場に倒れ臥す。

突然の射撃に驚いていた夏候惇が弾幕が止んだことを察して急遽振り返る、しかしその瞬間硬くて重たい物が眼前に飛来していた。

「あだっ!?」

銃身が硬い音を立てて夏候惇の額に命中する。
投げられた銃は着地しカラカラカラ…とコンクリートの上を滑って物陰に消えた。

痛む額を押さえつつ改めて顔を上げれば。

「張遼!?」

力いっぱい投げつけたフォームもそのままに、
張遼が真っ白な月と車を背に、入り口に立っていた。




























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