04



悲鳴と怒号があがった。
斬られた男が後方へ悲鳴と共に崩れ落ちる。
負傷した仲間に駆け寄るより早く、黒い男達は構えていた槍を加害者に向けて突き出した。
狂乱した男はその槍を斬り落とす。

「やめろ、丈!」

夏候惇の制止はもはや遅すぎた。
最初に刀を向けた丈を取り押さえようと馬の上にいた男が無手の腕を伸ばした。
背後から現れた腕を丈は斬る。斬り落とされはしなかったが骨まで達する深手だった。
血を見るのと同時に他の部下達も一斉に剣を抜いた。
その場は死と血と殺気に満ちた。

夏候惇はためらった。
やられる前にやる、それは戦場の鉄則だ。
彼ならば出現者達全てを切り捨てるのは難しくない。
…彼らが普通の人間と変わりない身体能力の保持者ならば。

たがこの者たちが目的地の住人だったならばどうか。
その可能性に気付いて戦慄した。

もしそうならば、自分達は親交の最初の一歩に失敗したのではないだろうか。

夏候惇は構えた大刀を下ろした。
ザシュ、と気味の良い音がして刃先が地面に立つ。
その行動を害意がないという印かどうか、彼を取り囲んだ男達が迷っている間に、戦闘は終了していた。

白い肌の人間と黒い肌の人間が共に赤い血を流し、呻き声を上げ、あるいは物言わぬ骸となって地に伏せていた。

夏候惇の部下である兵達は精鋭揃いだった。
だが長い過酷な旅の疲労と原住民の人数には、やはり太刀打ちできなかった。
死体はどちらのものが多いのかはとっさに判断がつかなかったが、夏候惇の軍で無傷なのは兵士でない非戦闘員を含めて十人。
双方にとっておそらく、無駄な損失だった。

剣を手放し降伏の意を著す十人にあまたの黒い手が延び乱暴に彼らを押さえつけ縄をかけた。

頭を地に付けられながら夏候惇は目を閉じた。
この旅が、このように終わるとは。
悔しさで喉元を競り上がってくるものを、最後の誇りで押し戻した。

まだだ、まだそうと決まったわけではない。

このまま殺されるようであれば縄を引きちぎっても逃げ出そう。
だがそうでなく、もしかしたら彼らの首魁に引き合わせてくれるかもしれない。ただしくは引っ立てられる、だろうが。

形はどうでもいい。
彼らが、目的地の住人であったならば。
その王に目通れるならば。

微かにでも、夏候惇達の旅は完全な無意味ではなかったことになる。
















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