05 縛されたまま密林の中を歩いて二時間ほど。 わずかそれだけで彼らの居住地域を一望できる場所にたどり着いた。 否、居住地域とは家屋や集落ではない。 森を抜け、夏候惇の眼前に開けたのは白く巨大な帝国だった。 その美しさは、何日も人外魔境と呼ばれるだろう未開の地を歩いてきた夏候惇達にとって、眩しすぎるほどの光景だった。 山脈に囲まれて隠れるように存在する巨大な山を、上半分丸裸にし、そこに切り出した白い石で城壁を築き上げる。 同じ石で区画を整理してあるのだろう、通りを作る石塀が同じ色に輝き、住居の屋根の草屋根、家畜を放した草地の緑、 地面の乾いた茶色との対比が美しかった。 足を進めるのを止め、呆然と帝国を眺める夏候惇達を、連行する者は叱らなかった。 むしろ、呆然とする侵入者の顔を見て誇らしげであった。 「…将軍…」 誰かが呟いた。 困惑するようでもあり、到達した喜びであり、その上で現状に絶望する、複雑すぎて考えることを放棄したような呟きだった。 返事することもできず、夏候惇はその眺めに見入っていた。 そして夏候惇は、この美しき帝国を統べる皇帝に会い、今一度呼吸を止めることになる。 |