07 夏候惇は口を閉じることを忘れ玉座の主に見入っていた。 その男は。 黒人の中心に居て華人より白い。 色素が抜け落ちたように髪の色さえ赤茶色だった。 あらかじめ異邦人の容姿を聞いていたと見え、その顔に驚きは無く、いっそ面白いものを見るような悪戯な笑みが浮かんでいる。 笑みを浮かべたその造形すら下段に並ぶ黒人達と似ていない。 切れあがった鋭い目、薄い唇ははるかに華人のものに近く、だがそれでいて華人ともどこか違っていた。 なぜ、こんなところにこんな男がいる。 皇帝は何事か夏候惇に語りかけたが、現地の言葉ゆえ夏候惇には通じぬ。 夏候惇はただ芸術品から流れ出した音楽のように聞き流した。 「…なんという…」 決して通じぬと知りながら、いつの間にか滑り出ていた言葉。 聞き取ったかのように皇帝が首を傾げた。 ためらう様子もなくその薄い唇は言葉を紡ぎ出した。 「お前はもしや中華の国の者か?」 完璧な発音だった。 はっと我に返り改めてその言葉を噛み砕く。 「私の言葉がわかるか?」 「わかり…ます、その通り、です。」 その返事に満足がいったのか、皇帝は幾分口元を綻ばせた。 |