09 部屋の前で陛下、と声をかけた門番に白い手を振り、扉を閉めさせる。 王の寝室には門番とはいえ緊急時以外は立ち入ってはならぬ。 彼は妻帯していないため、寝室に入って良いのは許可を得た高官のみだった。 バルコニーへと続くガラス戸を押し開けると湿度と共に夜風が室内に吹き込んだ。 この国では太陽と星が近い。 神官達は星と対話し吉兆を占う。 彼は一時期神官を目指していたが、星占術は獲得しないまま修行をやめてしまった。 今星々を眺めても天意は読めない。 星は彼に答えをくれない。 バルコニーへ出て北東を望む。 彼の胸中は北東からの訪問者に多くを占められていた。 遙かの地からやってきた乱暴な一団。 突然現れて彼の愛する民を幾人も殺した。 だが殺すには惜しかった。 遙か中華は、彼の長年望んだ地。 誼如何は別として話を聞きたい。 もちろん彼は皇帝であり、彼を罰する者があろうはずもないが、私情で法を歪めるのは彼の矜持が許さなかった。 は、と彼は短く息を吐いた。 夜風は冷たくはないがしっとりとした湿度を纏っていて呼吸がはばかられる。 慣れた自国の夜。 かの国の夜もこんな風に星が美しいだろうか。 彼らを殺さぬとしたら、方法は一つ。 早めに通達しておこうと決めると、髪が水分を含む前に外套を翻し室内へと戻った。 |