15 「夏候惇将軍は随分と色男であるようだな。」 晩に張遼に呼び出され、開口一番そう言われた。 陶器のように白い顔が笑っている。 誇張して皮肉っているのはすぐに分かった。 もとより冗談などには縁遠い男である。 夏候惇はうんざりという表情も露わに勧められた椅子に腰掛ける。 「…冗談はおやめください。」 「何を言われる。 北から来た客は乱暴で野蛮かと思ったら、将軍は紳士的で男前だと先ほど侍女達が噂していたぞ。」 夏候惇が露骨に顔をしかめたので張遼は更に笑った。 「本国でもそれは女性に人気があったことだろうな。」 「まさか。 向こうでは私のような無骨者は女の気は引けませぬ。」 張遼はくつくつと笑い、それは気の毒だな、女性が。とこぼした。 夏候惇は言われたことに大して興味を持てず、笑う皇帝の顔を見ていた。 自分などより、皇帝の方が遥かに心惹かれる存在であると思う。 夕食は済ませたと言っていた。 既に日は沈み、夜風が涼しくなっていたが、張遼は相変わらず薄布を重ねただけのような衣装である。 直接な露出は低いが、透けて見える肌色がなまめかしい気がする。 白い白い肌だと思っていたが、真白い薄布と比べれば淡く赤い。 彼の首元で白い小さな貝がしゃらん、と涼しい音を立てた。 それは彼の笑い声と共鳴し、夏候惇を陶酔に誘う。 「…将軍?」 「…は。 申し訳ありません。」 我に返り不躾に眺めた自分を恥じる。 一国の皇帝相手に、何を。 「私の服は何かめずらしかったかな?」 張遼はそのように思われたことなど気付いた風もなく、小首を傾げた。 なるべくそちらを見ないようにしながら、ゆっくりと瞬きをして幻影を追い払う。 「いえ、…お寒くはありませんか?」 「ああ、平気だ。 私はどちらかと言えば寒さに強く暑いのが苦手でな。」 そちらの血が混ざっているせいだろうか、と笑う顔が僅かに変化したことに夏候惇は気付いた。 何かを懐かしむような、切望するような。 まさか、伝え聞く程度の国のことだろうに。 陛下、と呼びかけられ、ん、と目線を夏候惇に戻した時にはもう皇帝の顔に戻っていた。 「…陛下は、我が国に興味がおありですか?」 しゃらっ、と金の耳飾りが鳴った。 |