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「…いや、将軍ずるいぞ、その話は刑の件が片付いてからと言ったではないか。」

ことさら明るい調子で答えた張遼を追うように、夏候惇は身を乗り出した。

「いえ、国交の話ではなく、私的にただお話させて頂くのは。
 陛下のお聞きになることに答えるだけでは。」

求めるような夏候惇の瞳と張遼の瞳はしばらく絡み合ったままだった。
圧迫感はないが真っ直ぐな視線を受けて、張遼の灰青の瞳が戸惑う。
聞きたいと思う純粋な思いと目の前の男の言いなりになることへの抵抗が葛藤しているようだった。

しかし、それも長くはなかった。
やがて張遼は諦めたような苦笑と共に背もたれに深く身を沈める。

「そうだな、断る理由は無いな。」

夏候惇がほっと笑んだ。
笑まれて張遼は猫目を僅かに見開く。

「…なんだ、やはり色男ではないか。」

「は?何か?」

「いや。」

天然に人を引きつける才能を持ち合わせた男なのだ、と納得する。
夏候惇に言わせれば、張遼こそが知らず人を惑わすと言えるほどに魅了する男だ、ということになるのだが。
今度こそ張遼は腹を決めて夏候惇に向かい合った。

「では、何を聞こうかな。」

「何なりと。」

「では…」

しばし張遼は瞑目する。
ずっと、知りたかったこと。
憧れていたこと。
それは、たったひとつ。

「草原を…」

今まで何度も脳内に描こうとしてそれすらことごとく叶わなかった、ゆめ。

「見渡す限りの草原を、馬で駆けるというのはどのような感覚だろうか。」



















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